第1回:シナリオ会議・前編
第1回となる今回は、アニメの根幹となる「シナリオ」を作るための打ち合わせ「シナリオ会議」に潜入しました。
●そもそも「シナリオ会議」って?
「シナリオ会議」とは、物語の流れや台詞まわしなど、作品の土台となる「脚本」の方向性を決める会議のこと。
「ホン読み」と呼ばれることが多い。
『神ない』の「シナリオ会議」には、熊澤監督とシリーズ構成&脚本の金春さんのほか、
マッドハウスのプロデューサーや制作進行、キングレコードのプロデューサーや宣伝担当、
そして原作元である富士見書房のプロデューサーなどが参加。
金春さんが用意したプロット(大まかな物語の流れと台詞などが書かれたあらすじ)や脚本をもとに、各話の内容が検討される。
TVアニメ『神ない』は原作のある作品であり、当然原作の内容に沿っている。
しかし、12話という構成で見せる以上、ある種の取捨選択が必要になる。
それもこの会議で決定されるのだ。
たとえば原作のどこからどこまでを1つのエピソードの中に落とし込み、どの部分に重点を置くかということを、原作を読み合わせながら決めていく。
今回参加したのは物語序盤で重要なポイントになる、ある話数の会議。
この話数では、アイが自分の中にある深い思いに気づくことが描かれ、さらにスカーやユリーの思いについても描かれる。
●どのようなことが議題にあがるのか?
まずは金春さんの脚本第1稿を読みながら、
熊澤監督が脚本の意図などを確認しつつ疑問点や膨らませたいところを上げていく。
すでにプロットを経た段階だが、より内容を磨き上げるため、主に……
・ユリーに焦点を当てるエピソードであるが、より彼を立たせるためにはどうするか
・アイが思い浮かべる家族について、どう描くか
という2点が吟味された。
ユリーに関して熊澤監督は、彼が抱える思いをストレートに伝え、カッコいい姿を見せたいと話し、
「(台詞や芝居などを)極力シンプルにまとめたい」と提案。
その上で、アイに関しては台詞やシーンの必要性そのものが議題にあがる。
この話数にはアイが父親と母親を見るシーンがある。
原作にもある感動的なシーンであるが、熊澤監督はアニメの1エピソードの中で膨らませてしまうと、ユリーの話もあり物語が複雑になってしまうのではないかと話す。
さらには、アイが見る両親の解釈についてや描き方についても、
「そもそもその両親はどのような存在なのか」、「両親の台詞は必要かどうか」、「必要だとしてどのような台詞にするのか」、「今ある台詞はアニメの中で描いてきた両親の姿と矛盾しないか」……という意見を提案した。
金春さんやプロデューサーとの話し合いの結果、実際どのような見せ方になったのかは、
ぜひアニメを観て確認していただきたい。
また、この話数に関しては、エピソードの締めくくり方などについても改めて話し合われたほか、
アイたちの心理を考える上で手がかりとなりそうな細かい設定……
たとえば、「“死者が生きる”世界では、誕生日はどのように受け止められているのか」などキャラクターの行動のベースとなる世界観の根幹についても話し合われた。
こうして「シナリオ会議」では、物語のベースとなるキャラクターの台詞や行動、
シーンについての必要性や膨らませ方について議論がなされていくのである。
後編では物語終盤の「シナリオ会議」に潜入し、『神ない』がどう作られているのかをより具体的に探っていくが、その前に次回はアフレコ現場に潜入し、アイたちがどのように命を吹き込まれるのかをお届けしたい。